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「金融メディアを疑い真実を追う」 ‐ 4月の雇用統計(5月4日)の見方 by Ochorin`s friend

4月の雇用統計(5月4日)の見方

               「金融メディアを疑い真実を追う」

4月分の非農業部門雇用者数がコンセンサス予想を5万5千人下回り、ダウ平均が170ドルも急落した。歴史的な暖冬、過去5年の間に最悪の金融危機に見舞われるなかで、季節調整が有効に働かないことは分かっているはずなのに、季節調整値の相対的にわずかな未達で大騒ぎしている。仮に季節調整を信じるとしても、2月と3月分はあわせて5万3千人分上方修正されている。2月分は第一次改定値に続いて今回の第二次改定値も上方修正された。4月の速報値の予想未達分を2月と3月分の上方修正が完全に相殺した形である。暖冬効果がみられた年初に比べ、勢いは鈍っているものの、ビル・グロス氏のコメントしているように、「米国の雇用は構造的に破壊されている」、「米国経済には雇用を生み出す力が無い」とまで断定できる否定的な内容なのだろうか。

下記に詳述するように、この雇用統計で株価がここまで下げる理由はなかろう。おそらく、漠然とした先行き不安(週末のフランス、ギリシャの選挙を控えた欧州不安)、敢えて言えば、1~3月が単なる暖冬要因による上触れで実態はビル・グロス氏の指摘するように悪いかもしれないとの脅迫懸念が再び頭をもたげたのかもしれない。

例えば、失業率が前月の8.2%から8.1%に0.1%改善したことについても、エコノミストは前月と同じ難癖をつけている。すなわち、失業率の分母の労働力人口の減少=「職探しを諦めた人」(?)が34万人に達したことによるもので、雇用が増えたことによるものではない、というもので、分母が減った場合のお決まりの「口実」がネガティブな評価のコンセンサスとなっている。

歴史的な暖冬により、季節調整でも適切に調整できなかったうえに、そもそも季節調整の内在的な要因が混乱に拍車をかけた面もある。過去5年の間に最悪の金融危機に見舞われ、季節調整が前提とする通常時のレベルが通常時のレベルでなかった可能性がある。そこで、今回の雇用統計の家計調査について、季節調整前の原数値をみると、失業率は前月の8.4%から0.1%どころか、なんと8.4%から7.7%に0.7%も低下している。労働力人口は41万人減で季節調整後の数値とほぼ同じあった。ところが、失業者数と就業者数は季節調整後の数値からは想像のできない「改善」を示している。まず、季節調整前の失業者数は前月より99.4万人も減少している(季節調整後では17.3万人しか減少していない)。そして、就業者数は前月より58.3万人増加している(季節調整後では16.9万人の「減少」と、プラスとマイナスが正反対)。この結果、失業率は劇的に低下した。マスコミはこれを「職探しを諦めた人」の効果による改善で片付ける。

それでは、労働力人口の34万人(季節調整後)の減少は何を意味するか。「職探しを諦めた人」であるとすると、なぜ4月に諦めたのか。データからそれらしき数値を探すと、長期失業者の労働市場からの退出が目に留まる。長期失業者は、前月より20万人も減少している。もちろん、なかには、4月に突然職が見つかった長期失業者もいよう。しかし、多くは4月にはじめて「職探しを諦めた」わけではなく、ずっと前に諦めており、失業保険の延長給付分まで目一杯受領し、その給付期限が切れて4月から職安に来なくなり、労働力人口から外されるというプロセスを辿ったとみられる。さらによく発表値をみると、長期失業者(通常27週以上失業状態の人を指す)は過去1年で75万人減少している(現在510万人)。長期失業という金融危機の遺産は、着実に時間が「解決」しつつある。これは、労働市場で新陳代謝が進んでいることを示すものと前向きに捉えるべきではないか。

次にNon Farm Payrollとして良く知られている事業所調査の非農業部門就業者数を再度みてみよう。4月は季節調整後で前月比11.5万人の増加にとどまった。中身をみると、特に目を引くのがプロフェッショナル&ビジネスサービス(人材派遣含む)で、前月比で6.2万人増と、雇用の増加数全体の半分にのぼっている。これは、企業が先行き不透明感(米国の大統領選や税制、欧州の行方)から通常雇用を差し控えているか、雇いたくとも適切な人材が見つからないミスマッチ状態にあるかのいずれかである。おそらく、すでに雇用回復初期状態ではないため、前者よりも後者の要素が強いとみられる。

その意味で、PIMCOのビル・グロス氏が雇用統計の発表後にブルームバーグラジオのインタビューで述べた「米国の失業問題は景気循環的なものではなく、今や再訓練の欠落や技術の高度化に起因する構造上の問題になった」との指摘は、ある意味で当たっているといえよう。しかし、これは何も今に始まった問題ではない。さらに、データを見る限り、「米国経済に雇用を生み出す力が無い」と断定する根拠はない。無理やり債券市場に有利なシナリオに引き寄せようとする意図さえ感じられる。

逆に、ビル・グロス氏を真似て極論を言えば、現在、賃金の上昇率は中国が米国をはるかに上回っており、このままのペースが続けばいずれ中国の賃金が米国を上回る時がくるかもしれない。すでに生産を中国から米国に移すメーカーもあると伝えられている。少なくとも、株式に「投機」ではなく「投資」しようと考える長期の投資家は、ヘッドラインの数値を弄ぶことしかできない金融メディアや、自らのポートフォリオに有利な見解を述べる傾向のある「専門家」のコメントに騙されないよう、自ら原データを手に取り、自ら基調を読みとる努力が必要と思われる。

by Ochorin`s friend




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